Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
春は南へ
一
「オオ、麓から、見馴れぬお方が見える」万野と鈴野が、こういいながら佇んでいた。
――と、藁沓を穿いた三名の武士が、息を喘いで登ってきたのである。萩原年景の家来だった。
「鈴野どの! 万野どの! 房の方々に、はやくお告げしてあげなされ、吉報がある」と、呶鳴った。
「え……吉報とは」
「お勅使だ。――お勅使が着いて今すぐこれへおいでなさる」
「えっ、御下向ですか」ふたりは、転び込むように、奥の房へ駈けこんだ。
年景の家来たちは、表へ廻って、庵室のうちへ春を告げるように、大声でいって廻った。
「――皆さま皆さま。お欣びあれ、勅使岡崎中納言範光卿が御下向なされ、主人の年景が案内してただ今これへ見えられましょうぞ」そういって、雪を蹴立てながら、人々はすぐ麓へ引っ返して行った。伝え聞いて、
「さては、御赦免の宣下」と、房の人々は、にわかに色めき立った。
西仏などは、子どものように、雀躍りして、
「御赦免じゃ、御赦免じゃ」と、はしゃぎ廻った。まだ何も知らなかった生信房は、西仏があまりはしゃいでいるので、
「この、おどけ者」と背をどやした。だが、その理を聞くと、
「えっ、御赦免の勅使が? ……そ、それはほんとか」