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しんらん

親鸞

吉川 英治

Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens

Aozora Bunko

九

今さらながら口惜しい。……のみならず、このよい年ごろをしてまで、この稲田の草庵の栄えを嫉み、自己の行法や道門の衰えを、ただおん身あるがためと憎み、板敷山に待ち伏せて、お生命をちぢめんものと、つい今日も、毒矢を研いでいたのであった。……怖ろしい、思えば、怖ろしい自分の心であった」

「だが――親鸞を害めなさろうとしたその心が、真の宿縁となって、ここにおん身が真実を吐き、わしが真実の手をのぶることとなったと思えば、その害心に、わしは掌をあわせる。まことをいえば、親鸞は、いつかおん身がこうして訪ねてくる日のあることを信じていた」

「えっ、それまで、この弁円の心が、わかっておいでであったか」

「何か、通ずるものがあったとみえる。わしの心には、おん身の心が映って、ぼんやりそんな気持がしていた。――その日が来たと思えばよろこばしい」

「おれの果報は、まだ尽きなかった。――そういって下さるからには、弁円の願いも聞き届けて下さろう。思えば得難い生を同じ時にうけ、得難い明師におれはめぐり会ったのだ。――親鸞どの」と、弁円は大地に膝を改めて、両手をついた。

「今日から、この弁円を、どうか御弟子の端になりと、加えてくだされまいか。