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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
二
行った。
橋のうえから北は、さすがに、混雑していた。いつまでも去りやらぬ弥次馬が、遊女町の余燼をながめて、
「また、盗賊の仕業か」
「そうらしいて。悪酔いして、乱暴するので、遊ばせぬと断ったところが、手下どもを連れて、すぐひっ返し、見ているまえで、火を放けて逃げおったということじゃ」
「なぜ、見ていた者が、すぐ消すなり、人を呼ばぬのじゃ」
「そんなことすれば、すぐあだをされるに決まっとるじゃないか。鎌倉衆のお奉行ですら、あいつばかりは、雲や風みたいで、どうもならん人間じゃ」
そんな噂をしあって、戦慄をしていた。
二
その夜、範宴が求められて法話に行った武家邸は、火事のあった六条の遊女町とはだいぶ距たっていたが、それでも、性善坊が息せいて行きついてみると、門前には高張をつらね、数多の侍だの、六波羅衆の鞍をおいた駒などが市をなしていななきあい、こもごもに玄関へ入って、火の見舞いを申し入れていた。
法話に集っていた人々も、火事ときいて、あらかたは帰ったのであろう。性善坊は、混雑のあいだをうろうろしながら、家の子らしい一人の侍に、
「うかがいますが」と、腰を下げた。