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しんらん

親鸞

吉川 英治

Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens

Aozora Bunko

五

私情のために、大法を蹂躙らるるとの自白だ」喚き立てると、

「ひかえなされい!」若い座主の面に、初めて、青年らしい血しおが、漲った。

「わしは、範宴の天稟を愛す。わしは、範宴のすぐれた気質を愛す。見よ、彼は将来の法燈を、亡すか、興隆するか、いずれかの人間になろう。叡山人多しといえど誰か、十歳を出たばかりの範宴にすら勝る法師やある。――その才において、その克己において、その聡明において、その強情我慢なことにおいて。……嘘と思わるる方あらば、彼をここへ呼んで、まず、法論を闘わせてみられるがよい。和歌といわば和歌、儒学とあらば儒学、おそらく少納言は否むまい。望みの者は、仰せ出られい」

五

誰も、進んで、応じる者はなかった。――わずか十歳の童僧と、衆人の中で、法論をやって、いい破ったところで、誇りにはならないし、敗れたらざまはない。

そういう打算は、すぐ、誰の胸にもうかぶことだし、御連枝の出で名門の深窓から、青蓮院へ坐ったのみで、世間知らずの若い座主と心であまく見ていた慈円が、白皙な面を、やや紅らめて、きびしい態度に出たので、

(これは……)と少し意外にも思ったことに違いなかった。