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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
四
師法然の訃を途上で聞いて、都へ上洛るのを断念して、野へ去った親鸞の本願は、今こそ届いた。
ありのままに――愚のままに――衆と共に――と願った彼の生活にも、今は焦躁もない。
百姓たちは、自分たちの群れの中に、上人を交えているのさえ大きな歓びだったのに、昨日までは、働くことは厭なことであり、辛いことだとばかり考えていたのに、汗というものに対して、
「これで安心して食えるばかりでなく、この汗のために、家族が肥え、世間が富む。働きもせずぐちをいってるなんて馬鹿なことだ。百姓こそは、国の宝じゃ、百姓は国の大みたからだ。なるほど嘘じゃない。働いて働いて――念々称名していれば、この大安心があるものを……」
農の仕事は、いやしい仕事と、自分で自分の天職を卑下していたものが、彼らのそれは誇りとなってきた。幸福感と張合いにみちてきた。汗は希望となり光となり、一日のあいだ、仕事の嫌悪を、思い出す間がなかった。
腰を伸ばして、ふと空を仰ぐと、いつの間にか、夕月があった。
「おお、もう手元が暗い、田から上がって、嬶や子と、晩飯じゃ。飯がすんだら、お上人様のところへお邪魔に寄って、なんぞまた、有難いお話しを聞きたいものよの」