Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんらん

親鸞

吉川 英治

Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens

Aozora Bunko

介の性善坊は、それを知ってから、毎日、側へ来て見ていた。

山門の足場に、白い霜が下りるころになると、その足場はこわされて、仏師や塗師たちも来なくなった。

すると、初冬のある日、

「ごめん下さい」範宴のいる僧院の外で、聞き馴れない声がした。次の間にいた性善坊が、

「どなた?」障子をあけると、

「おお! 介じゃないか」

「箭四郎か」

「変ったのう」

「まあ、上がれ」

「山門のうちも、なかなか広くて、諸所に、僧房があるので、さんざん迷うた」

「達者か」

「おぬしも」

「六条のお館は、和子様が、青蓮院にお入りあそばしてから、まるで、冬枯れの家のようにおさびしくてな」

「そうだろう。――して、お館様にも、おかわりないか」

「む……まず、ご無事と申そうか」

「して、今日は」

「この近くまで、お使いに来たので、そっと立ち寄って、和子様のご様子を聞いて帰ろうかと……」

「そうか、よく寄ってくれた。世間を去ると、世間が恋しい」ふたりは、手をとり合って、涙ぐんでいた。性善坊は、やがて立って、

「範宴さま」

「はい」範宴は、書を読んでいた。

「――誰が見えたの」

「箭四が、参りました」

「おお」と、さすがに、なつかしそうに、縁のほうへ走ってきた。