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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
で、機先を制して、
「二十八日の通牒は、もう、おのおののお手許へも、届いたことと思うが、当日の式事については、諸事、ご遺漏のないように頼みますぞ」
「…………」誰も、答えなかった。
不満と、不平とが、ぴかぴかと眼に反抗をたたえて、そういう座主の面を見つめているだけなのである。
「座主」四王院の阿闍梨が、老人のくせに、柘榴のような色をしている口をまずひらいた。
「なにか」と、慈円の眸は、静かである。
「今の御意、正気でおわすか」
「ほ……異なおたずねである。おのおのにも、よろこんで、大戒の席に列していただきたいということが、酒にでも、酔うているように聞えますか」
「酔うているどころか、狂気の沙汰と思う」
相手の冷静な容子は、かえって、彼らの赫怒を熾にした。
「よもやと存じて、今日まで、ひかえていたが、座主、御自身のお口から、さよういわるるからには、もう、黙してはおられん」
「何なりとも、仰せられい。叡山は、慈円のものにあらず、また、学僧のものにあらず、長老のものでもない」
「もちろん」
「衆生のものでござる」
「いや、仏のものだ」
「仏は、衆生を利したもうばかりに、下天しておわす。