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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
それはいいが、中に、たしかに、目立って屈強な男が、梢のからだを横向きに抱いていた。範宴は、
「やっ、あなたは、小泉の宿でお会い申した、天城四郎殿ではありませんか」いうと四郎は、からからと四辺へ響くような声で笑った。
「そうだ、この女は小泉の木賃に宿り合わせたときから、それと言い交わした約束があるので、もらってゆく、天城四郎とは偽り、天城四郎とも、木賊四郎ともいう盗賊だ。異存があるなら、なんなりとそこでほざいて見るがいい」範宴は、この怖ろしい魔人の声を聞くと、世の中のすべてが、暗澹とわからないものになってしまった。つい、今がいままで、世にも奇特な人として、胸のうちに、あの時の感謝を忘れなかった、その人物が、仮面を剥いで、そういうのであるだけに、唖然として、しばらくはいいかえすべき言葉もない。
七
「ははあ……。それではあなたは、真面目な職業のお方ではなく、天城の住人で、木賊四郎と呼ぶ野盗の頭であったのですか。――けれど、そういわれても、私にはまだ信じられません」範宴がいうと、四郎は、
「なにが信じられねえと?」聞き咎めて、兇悪な眼で睨みつけた。
「――さればです。