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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
得たるものあらず――と末法の世を喝破してある言葉を一読して、翻然と悟って、聖道自力の旧教を捨て、浄土他力の真門に入ったということでござる。その他、わが朝の先徳にも、空也、源信、良忍、永観などみな、習い研きたる智恵も行もすてて皆、念仏の一行に、往いて生れたる人々ではござらぬか。お疑いあるな、善人も悪人も、智者も愚者も、男子も女人も、ただ、南無阿弥陀仏とのみ唱えて、深く思い入れ給うならば、百人が百人ながら、往生には洩れぬものでござる――往いて生れざる者は一人もあるべきはずのものではござらぬぞ。この身は、煩悩悪業の身なればなどと、大慈悲光の下に、要らざる退身など持ち給うなよ。弥陀は、深業の衆生のためにと起したまえるこの本願にてあるものを、強悪の身とて、煩悩の身とて、なんの障りがありましょうぞ」
滝つぼの水音と共に、上人の遠い声は、とうとうと、月輪殿の胸の底へ流れこんでくるのであった。
十
そればかりでなく、月輪殿は、この念仏道場へ来ると、いつも不思議な一つの世帯というものを感じるのだった。
この法然上人を家長とする一つ軒の下には、今、随身の弟子だけでも八十八名いるといわれているが、その八十余名の前身を尋ねてみると、小松内府重盛の子の心蓮だの、無官大夫敦盛の子の法信房盛蓮だの、その他、栄華を極めた平家の人々の没落