Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
上人もまた、耳に入ったらしいが、それについて一言もいわなかった、月輪殿も、じっとしておられた。
「どうしたらよいだろう? ……一人や二人で行ったところで、どうもならぬし」
二、三の者が門前でこうつぶやきながら、はらはらと眺めている間に、やがて泥土の戦場を駈け抜けてきたような糸毛輦と、摩利支天のように硬ばった顔をした二人の勇者とが、その轅について、ぐわらぐわらとこなたへ曳いてくるのが見えた。
「おお!」
「無事に、見えられた」思わず、門前に立っていた者は手を挙げた。
綽空は、すぐ道場へ入った。玉日も、その後に添って、良人と共に、そのまま講堂の中へ坐った。
朽葉色の法衣や、黒い法衣ばかりの中に、たった一人、彼女の装粧だけが眼ざめるほど鮮麗だった。
学生たちの眼が、どうしてもそれへ動かされずにいなかった。講義をしながら上人はそれを感じたであろう、粛然としていた中に、何となく、無言の動揺がながれ始めたのを。
しかし――。綽空と玉日のふたりだけは、いかにも、安心そのものの象であった、幸福そのものの相だった。他へ、何ら気の散ることなく、上人の講義の終るまで、心静かに、聴いていた。