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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
湛空が隙間見た燭は白く冴えていた、氷の部屋のようにそこは冷たい、火の気のあろうはずはない。
彼は、次の間に、凍りついたように坐ったまま、師の心を、さまざまに思いいたわって、上人が眠らぬうちは、自分もこうしていようと決心した。しんしんと草も木も眠っているこの真夜中に、ただ一人でも、師の房の念仏をどこかで魂に受けとっている者があるとすれば、一塊の炭火ほどでも、師の心を温かにしはせまいか――と。湛空は、そう考えたので、
「えへん」次の間に、侍側している御弟子がございます――ということを知らせるつもりで、軽く咳をした。
すると、翌日。いつものように大勢の弟子たちの朝礼を受けに出てきた上人は、常になく不機嫌な顔色をして、いった。
「その辺に湛空はおらぬかの、ちょっと呼んでくだされい」
二
湛空は、その朝、師の御房がお呼びでございますぞ――と同門の者からいわれて、
「はい、ただ今」答えながら、心のうちで、すぐこう思った。
さては昨夜の自分の真心を上人もお酌み下すって、何か、ご機嫌の麗しいおことばでもかかるに違いない――と。
彼はいそいそと、法然の前へ出て行った。そこには随身の他の弟子たちも大勢いて、上人が何で改まって湛空を呼ばれたのかと、まだ解せない面持ちでいたが、湛空はひそかに得意であった。