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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
「ほう? ……銭が要らぬことと思って……閑人がよく寄って来やがる」四郎は、一般の聴衆の中にまじって、大あぐらをかいていた。
――それでも、多少は気がひけるとみえ、なるべく、他人の背中を楯にして、講壇のほうから直接自分の顔が見えないように注意していた。
元より、説教を聞こうなどという意志は少しもない。彼は、眼ばかりうごかしていた。足がしびれると、すぐ立って、縁へ出て、
「う、あ、ワあ……」と、欠伸をする。
また、用ありげに、僧房の中を、うろうろ歩き廻った。わざと、道をまちがえた振りをして、台所のほうへまで、歩いて行った。
「いねえな。どう嗅いでも、ここには女のにおいがしねえわい。やはり、吉水には匿われていねえとみえる」彼は、弁円のことばが、腹立たしくなって、
「あの野郎、とんだ無駄骨をさせやがった……」と、恨んだ。
見限りをつけて帰ろうと思ったが、禅房の門まで人がいっぱいなのである。それに、何となく気懶くもあったので、彼はまた、人混みの中に坐り込んで、ケロリとした顔をしていた。
法然門の人々が出て、代る代るに、念仏門の教えを説いている。聴者は、咳声もしないで熱心に聞き入っていた。