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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
院へは、法皇のまわりに、平家の人々がたくさん取り巻いて、閥外の人間を遠ざけるから、範綱などは、めったに伺候することはなかったのであるが、近ごろはまた、法皇のお心もちが少し変って、あまりな平家閥に、眉をひそめられることが多く、ときどき、範綱にもお招きがある。むろん政治上の事にかかわる範綱ではないから、和歌のお相手や、稀に、御宴の端につらなるくらいの程度であった。
「いつも、お帰りは、遅うございますか」介が、当惑そうに訊くと、館の者が、
「お出ましの時は、たいがい遅くなるのが常でございます」と答えた。
「それは困った」介は、院の御所へ行って、衛士に取次ぎを頼んでみようと思った。で、そこを辞して、また駈けだして行くと、途中で、範綱に会った。
「介ではないか」呼びとめられて、
「おおよい所でした、六条様、たいへんです。有範様の御容体がにわかにわるうござりまして、医師薬師も、むずかしいという仰せ。奥のおん方様も、宗業様も、お枕べに、付ききりです。すぐ、お越しくださいませ」
「や……有範が」そんな予感があったように、範綱は、すぐに、牛輦を引っ返して、日野の里へいそがせた。