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しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
と、いって、あわてて、
「人に連れられ、見に参ったことがございました。その折、あなた様の御法話をうかがいましたので」
「それで、わしの眼にも残っていたものとみえる。――あなたは、その折、他人が念仏にゆくので、流行ものでも見るような気持で参られたのであろうが、そういうかりそめの人にさえ、御仏はきょうの慈縁を結んでくだされた」
「ほんとに……」と山吹は初めて、沁々と、親鸞のことばに耳を傾けだした。
「――もしわしが、あの時、おん身を振り向かずに、そのまま行き過ぎてしもうたら、あなたは、ふたたび明日の陽を見ない人だったでしょう」
「そうです、仰っしゃるとおり、きょうこそは、死のうと覚悟して、家へ遺書まで残して出てきたのでございました。――ですが、上人さま、ただ私とすれちごうただけで、どうして私が死ぬ気持でいたことが、あなた様にはわかりましたか」
「わからなくてどうしましょう。おん身のたましいも、わしのたましいも、人間のたましいに二つはありません、ひとつものであるのです、自他無差別、本来無垢、澄みとおって純なるものです。――ただそれが肉体というものの、貌容とか、身装とか、うわべのものにつつまれているので、おん身とわしとが、べつな者に見えたり、敵に思われたり、憎んだり、嫉んだり、あらゆる愛憎の霧がかかってきて、そこに他人という