Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんらん
親鸞
吉川 英治
Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens
「――なんで、無断でこんな所へ入ってきたかっ。どこの乞食じゃ」
「わしは、配所の親鸞でござる……。お裏口にて、先ほどから、しきりと訪いましたが、どなたも出てお越しがない。それによって」
「なに、親鸞?」と、年景は、さっき妻から聞いたことばをふと思い出して、
「その親鸞が、何しにやって来たかっ」と、鬼のような顔を作った。
七
どんな烈しい人間の悪感情に向っても、親鸞は親鸞の気の持ち方に、さざ波ほどの揺るぎもうけなかった。澄んだ湖のように、彼の眸は穏やかなのである。
「托鉢に参ってござる」こう彼がその面のような静かなことばでいうと、
「なに、托鉢に」と、年景の声は、よけいに荒々しく棘立って、
「ば、ばかなっ。ここはただの民家でない、かりそめにも、代官萩原年景の役宅と住居のある所、流人僧の出入りなど相成らん」
「ご存じないか、出家には門がないことを。――権門も、富者の門も、貧者の門も、すべて僧には同じものでしかない」
「貴さま、この年景に、理窟をいいに来たのか」
「ちがいます、托鉢のためでござる。そして、わしが布施を受けると共に、おん身にも布施したいものがあって」
「乞食坊主から、なにを貰おうぞ、無礼者め」