Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんらん

親鸞

吉川 英治

Read 親鸞 (しんらん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 566,138 characters · 1127 screens

Aozora Bunko

べっして、体のわるいようなせいではない――。鈴野はなにかしら秘密を抱いたようで、独りで胸が傷んでならなかった。

――蝉の音が、午の窓へすずやかに啼いていた。芭蕉の葉が、時折大きく風に揺れる。

その蔭へ、石念は、いつの間にか来ていて、じっとかがみこんでいた。

四

「――誰じゃ」ふと窓の外へ眼をやった時、親鸞が静かに芭蕉の蔭へ訊ねた。

「石念ではないか」

「は……はい」

「何しておる」

「……私は……お師さま! ……御庵室の床に上がれない不浄な人間でございます、外道へ落ちた人間です」

「何をいう」ほほ笑みが親鸞の顔に泛かんだ。他愛ないことでも聞くように、

「お上がりなさい」と、それだけいった。

「…………」石念はなおそこにじっとかがまり込んでいたが、やがて思い切ったように、

「よろしゅうございましょうか」おそるおそる立った。

そしてやがて、縁から科人のような卑屈な眼を俯せて、親鸞の室へ坐り、自分の頭に下るであろう罪の鉄槌を待っていた。

「……なんじゃ、どうしたのか」親鸞はまだ何も知らないらしいのである。だが、それはかえって石念の苦痛であった。

何も知らない師の房へ、新しく口を切り出すのが辛かった。