Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(一)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(一) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 231.525 Zeichen · 463 Bildschirme
二
「思い直す気はないか」
「どういうふうに」
「七宝寺のある美作の山奥もよかったが、この柳生の庄もわるくないの。平和で醇朴で、お通さんのような佳人は、世俗の血みどろな巷へ出さずに、生涯そっと、こういう山河に住まわせて置きたいものじゃ。たとえばそこらに啼いている鶯のようにな」
「ホ、ホ、ホ。ありがとうございます。沢庵さん」
「だめだ――」
沢庵は、嘆息した。自分の思い遣りも、盲目的に思う方へ走ろうとするこの青春の処女には、何の力もないことを知った。
「だが、お通さん。――そっちへ行くのは、無明の道だぞ」
「無明」
「おまえも寺で育った処女じゃから、無明煩悩のさまよいが、どんなに果てなきものか、悲しいものか、救われ難いものかぐらいは知っておろうが」
「でも、私には、生れながら有明の道はなかったんです」
「いや、ある!」
沢庵は一縷の望みへ情熱をこめて、この腕に縋れとばかり、お通のそばへ寄ってその手を取った。
「わしから石舟斎様へよう頼んであげよう。身の振り方を、生涯の落着きを。――この小柳生城にいて、よい良人をえらび、よい子を生み、女のなすことをなしていてくれたら、それだけここの郷土は強くなるし、そなたもどんなに幸福か知れぬが」