Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
その代りに少しは道楽もしましたと笑っていた。
これが縁になって、徳さんは私たちとも口を利くようになった。途中で会っても彼は丁寧に時候の挨拶などをした。わたしの家へ仕事に来てから半月ばかりも後のことであったろう、私がある日の夕方銀座から帰ってくると、町内の酒屋の角で徳さんに逢った。
徳さんも仕事の帰りであるらしく、印半纏を着て手には薄のひと束を持っていた。十月の日はめっきり詰まって、酒屋の軒ランプにはもう灯がはいっていた。徳さんの持っている薄の穂が夕闇のなかに仄白くみえた。
「今夜は十三夜ですか。」と、私はふと思い出して云った。
「へえ、片月見になるのも忌ですから。」
徳さんは笑いながら薄をみせた。二人は云い合わしたように暗い空をみあげた。後の月は雨に隠れそうな雲の色であった。私はさびしい心持で徳さんと並んであるいた。袷でももう薄ら寒いような心細い秋風が、すすきの白い穂をそよそよと吹いていた。
路地の入口へ来ると、あかりもまだつけない家の奥で、お玉さんの尖った声がひびいた。
「なんでえ、なに云ってやあがるんでえ。畜生。馬鹿野郎。」
お玉さんがまた狂い出したかと思うと、私はいよいよ寂しい心持になった。