Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
三
こうした湯治場気分は今日は求め得られない。
浴客同士のあいだに親しみがあると共に、また相当の遠慮も生じて来て、となり座敷には病人がいるとか、隣りの客は勉強しているとか思えば、あまりに酒を飲んで騒いだり、夜ふけまで碁を打ったりすることは先ず遠慮するようにもなる。おたがいの遠慮――この美徳はたしかに昔の人に多かったが、殊に前に云ったような事情から、むかしの浴客同士のあいだには遠慮が多く、今日のような傍若無人の客は少なかった。
三
しかしまた一方から考えると、今日の一般浴客が無遠慮になるというのも、所詮は一夜泊まりのたぐいが多く、浴客同士のあいだに何の親しみもないからであろう。殊に東京近傍の温泉場は一泊または日帰りの客が多く、大きい革包や行李をさげて乗り込んでくるから、せめて三日や四日は滞在するのかと思うと、きょう来て明日はもう立ち去るのが幾らもある。こうなると、温泉宿も普通の旅館と同様で、文字通りの温泉旅館であるから、それに対して昔の湯治場気分などを求めるのは、頭から間違っているかも知れない。
それにしても、今日の温泉旅館に宿泊する人たちは思い切ってサバサバしたものである。