Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
金華山の一夜
この人々のうちの最年長者は、七十五歳であると聞いた。
金華山の一夜
金華山は登り二十余町、さのみ嶮峻な山ではない、むしろ美しい青い山である。しかも茫々たる大海のうちに屹立しているので、その眼界はすこぶる闊い、眺望雄大と云ってよい。わたしが九月二十四日の午後この山に登った時には、麓の霧は山腹の細雨となって、頂上へ来ると西の空に大きな虹が横たわっていた。
海中の孤島、黄金山神社のほかには、人家も無い。参詣の者はみな社務所に宿を借るのである。わたしも泊まった。夜が更けると、雨が瀧のように降って来た。山を震わすように雷が鳴った。稲妻が飛んだ。
「この天気では、あしたの船が出るか知ら。」と、わたしは寝ながら考えた。
これを案じているのは私ばかりではあるまい。今夜この社務所には百五十余人の参詣者が泊まっているという。この人々も同じ思いでこの雨を聴いているのであろうと思った。しかも今日では種々の準備が整っている。海が幾日も暴れて、山中の食料がつきた場合には、対岸の牡鹿半島にむかって合図の鐘を撞くと、半島の南端、鮎川村の忠実なる漁民は、いかなる暴風雨の日でも約二十八丁の山雉の渡しを乗っ切って、必ず救助の船を寄せることになっている。