Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
水
南京虫を恐れない満洲の民も、蝎と聞けば恐れて逃げる。
蝎も南京虫とおなじく、人家の壁の崩れや、柱の割れ目などに潜んでいる。時には枯草などをたばねた中にも隠れている。しかも南京虫とは違って、その毒は生命に関する。私はある騎兵が右手の小指を蝎に螫されて、すぐに剣をぬいてその小指を切断したのを見た。
蝎の毒は蝮に比すべきものである。殊に困るのは、その形が甚だ小さく、しかも人家の内に棲息していることである。蝎の年を経たものは大きさ琵琶の如しなどと、シナの書物にも出ているが、そんなのは滅多にあるまい。私の見たのは、いずれもこおろぎぐらいであった。
土地の人は格別、日本人が蝎に襲われたという噂を、近来あまり聞かないのは幸いである。満洲開発と共に、こういう毒虫は絶滅させなければなるまい。
蝎は敵に囲まれた時は自殺する。おのが尻尾の剣先をおのが首に突き刺して仆れるのである。動物にして自殺するのは、恐らく蝎のほかにあるまい。蝎もまた一種の勇者である。
水
満洲の水は悪いというので、軍隊が基地点へゆき着くと、軍医部では直ぐにそこらの井戸の水を検査して「飲ムベシ」とか「飲ムベカラズ」