Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
御堀端三題
一 柳のかげ
二十四年六月には三崎座が出来た。殊に二十五年一月の神田の大火以来、俄かにここらが繁昌して、またたくうちに立派な町になってしまったのである。その当時は、むかしの草原を知っている人もあったろうが、それから三十幾年を経過した今日では、現在その土地に住んでいる人たちでも、昔の草原の茫漠たる光景をよく知っている者は少ないかも知れない。武蔵野の原に大江戸の町が開かれたことを思えば、このくらいの変遷は何でも無いことかも知れないが、目前にその変遷をよく知っている私たちに取っては、一種の感慨がないでもない。殊にわたしなどは、かの春木座がよいの思い出があるので、その感慨がいっそう深い。あの当時、ここらがこんなに開けていたらば、わたしはどんなに楽であったか。まして電車などがあったらば、どんなに助かったか。
暗い原中をたどってゆく少年の姿――それがまぼろしのようにわたしの眼に浮かんだ。(昭和2・1「不同調」)
御堀端三題
一 柳のかげ
海に山に、涼風に浴した思い出もいろいろあるが、最も忘れ得ないのは少年時代の思い出である。今日の人はもちろん知るまいが、麹町の桜田門外、地方裁判所の横手、のちに府立第一中学の正門前になった所に、五、六株の大きい柳が繁っていた。