Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
紙鳶
わたしが七つか八つの頃、叔父に連れられて一度その二階に上がったことがある。火鉢に大きな薬罐が掛けてあって、そのわきには菓子の箱が列べてある。のちに思えば例の三馬の「浮世風呂」をその儘で、茶を飲みながら将棋をさしている人もあった。
時はちょうど五月の初めで、おきよさんという十五、六の娘が、菖蒲を花瓶に挿していたのを記憶している。松平紀義のお茶の水事件で有名な御世梅お此という女も、かつてこの二階にいたと云うことを、十幾年の後に知った。
その頃の湯風呂には、旧式の石榴口と云うものがあって、夜などは湯煙が濛々として内は真っ暗。しかもその風呂が高く出来ているので、男女ともに中途の階段を登ってはいる。石榴口には花鳥風月もしくは武者絵などが画いてあって、私のゆく四丁目の湯では、男湯の石榴口に水滸伝の花和尚と九紋龍、女湯の石榴口には例の西郷桐野篠原の画像が掲げられてあった。
男湯と女湯とのあいだは硝子戸で見透かすことが出来た。これを禁止されたのはやはり十八、九年の頃であろう。今も昔も変らないのは番台の拍子木の音。
紙鳶
春風が吹くと、紙鳶を思い出す。暮れの二十四、五日ごろから春の七草、すなわち小学校の冬季休業のあいだは、元園町十九と二十の両番地に面する大通り(麹町三丁目から靖国神社に至る通路)は、紙鳶を飛ばすわれわれ少年