Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme

Aozora Bunko

二

そうして、又こんなことを話しかけた。

「あの徳さんという人は、まあ行き倒れのように死んだんですね。」

「行き倒れ……。」と、わたしは又おどろいた。

「病気が重くなっても、相変らず自分の方から診察を受けにかよって来ていたんです。そこで今朝も家を出て、薬罐をさげてよろよろと歩いてくると、床屋の角の電信柱の前でもう歩けなくなったんでしょう、電信柱に寄り掛かってしばらく休んでいたかと思ううちに、急にぐたぐたと頽れるように倒れてしまったんです。床屋でもおどろいて、すぐに店へかかえ込んで、それから私の家へ知らせて来たんですが、先生の行った頃にはもういけなくなっていたんです。」

こんな話を聴かされて、私はいよいよ情けなくなって来た。折角の柚湯にもいい心持に浸っていることは出来なくなった。私はからだをなま拭きにして早々に揚がってしまった。

二

家へ帰ってからも、徳さんとお玉さんのことが私の頭にまつわって離れなかった。殊にきょうの柚湯については一つの思い出があった。

わたしは肩揚げが取れてから下町へ出ていて、山の手の実家へは七、八年帰らなかった。それが或る都合で再び帰って住むようになった時には、私ももう昔の子供ではなかった。