Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
旅すずり
(一)心太
(二)天狗
わたしはまだ異国の夢が醒めないのではないかと、時どきに自分を疑うことがある。(大正十二年十月追記『十番随筆』所収)
旅すずり
(一)心太
川越の喜多院に桜を観る。ひとえはもう盛りを過ぎた。紫衣の僧は落花の雪を袖に払いつつ行く。境内の掛茶屋にはいって休む。なにか食うものはないかと婆さんにきくと、心太ばかりだと云う。試みに一皿を買えば、あたい八厘。
花をさそう風は梢をさわがして、茶店の軒も葭簀も一面に白い。わたしは悠然として心太を啜る。天海僧正の墓のまえで、わたしは少年の昔にかえった。(明治32・4)
(二)天狗
広島の街をゆく。冬の日は陰って寒い。
忽ちに横町から天狗があらわれた。足駄を穿いて、矛をついて、どこへゆくでもなし、迷うが如くに徘徊している。一人ならず、そこからも此処からも現われた。みな十二、三歳の子供である。
宿に帰って聞けば、きょうは亥子の祭りだという。あまたの小天狗はそれがために出現したらしい。空はやがて時雨となった。神通力のない天狗どもは、雨のなかを右往左往に逃げてゆく。その父か叔父であろう。四十前後の大男は、ひとりの天狗を小脇に抱えて駈け出した。