Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
仮住居
わたしは麻布にある間に『十番随筆』という随筆集を発表している。その後にも『猫柳』という随筆集を出した。しかも「十番雑記」の一文はどれにも編入されていない。傾きかかった古家の薄暗い窓のもとで、師走の夜の寒さにすくみながら、当時の所懐と所見とを書き捨てたままで別にそれを発表しようとも思わず、文庫の底に押込んでしまったのであろう。自分も今まで全く忘れていたのを、十四年後のきょう偶然発見して、いわゆる懐旧の情に堪えなかった。それと同時に、今更のように思い浮かんだのは震災十四周年の当日である。
「あしたは九月一日だ。」
その前日に、その当時の形見ともいうべき「十番雑記」を発見したのは、偶然とはいいながら一種の因縁がないでも無いように思われて、なんだか捨て難い気にもなったので、その夜の灯のもとで再読、この随筆集に挿入することにした。
仮住居
十月十二日の時雨ふる朝に、私たちは目白の額田六福方を立ち退いて、麻布宮村町へ引き移ることになった。日蓮宗の寺の門前で、玄関が三畳、茶の間が六畳、座敷六畳、書斎が四畳半、女中部屋が二畳で、家賃四十五円の貸家である。裏は高い崖になっていて、南向きの庭には崖の裾の草堤が斜めに押し寄せていた。