Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
秋の修善寺
(一)
こんなことで、どうして世の中に生きていられるだろう。考えると、何だか悲しくなって来た。
雷雨は漸くやんだ。山の方では鹿の声が遠くきこえた。あわれな無信仰者は初めて平和の眠りに就いた。枕もとの時計はもう一時を過ぎていた。(大正2・10「やまと新聞」)
秋の修善寺
(一)
(明治四十一年)九月の末におくればせの暑中休暇を得て、伊豆の修善寺温泉に浴し、養気館の新井方にとどまる。所作為のないままに、毎日こんなことを書く。
二十六日。きのうは雨にふり暮らされて、宵から早く寝床にはいったせいか、今朝は五時というのにもう眼が醒めた。よんどころなく煙草をくゆらしながら、襖にかいた墨絵の雁と相対すること約半時間。おちこちに鶏が勇ましく啼いて、庭の流れに家鴨も啼いている。水の音はひびくが雨の音はきこえない。
六時、入浴。その途中に裏二階から見おろすと、台所口とも思われる流れの末に長さ三尺ほどの蓮根をひたしてあるのが眼についた。湯は菖蒲の湯で、伝説にいう、源三位頼政の室菖蒲の前は豆州長岡に生まれたので、頼政滅亡の後、かれは故郷に帰って河内村の禅長寺に身をよせていた。そのあいだに折りおりここへ来て入浴したので、遂にその湯もあやめの名を呼ばれる事になったのであると。