Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
大きくいえば、部下全滅の将軍と同様の感がある。
馬琴も歯が悪かった。「里見八犬伝」の終りに記されたのによると、「逆上口痛の患ひ起りしより、年五十に至りては、歯はみな年々にぬけて一枚もあらずなりぬ」とある。馬琴はその原因を読書執筆の過労に帰しているが、単に過労のためばかりでなく、生来が歯質の弱い人であったものと察せられる。五十にして総入歯になった江戸時代の文豪にくらべれば、私などはまだ仕合せの方であるかも知れないと、心ひそかに慰めるのほかはない。殊に江戸時代と違って、歯科の技術も大いに進歩している今日に生まれ合せたのは、更に仕合せであると思わなければならない。それにしても、前にいう通り、一種の寂寥の感は消えない。
私をさんざん苦しめた後に、だんだんに私を見捨てて行く上歯と下歯の数かず、その脱落の歴史については、また数かずの思い出がある。それをいちいち語ってもいられず、聞いてくれる人もあるまいが、そのなかで最も深く私の記憶に残っているのは、奥歯の上一枚と下一枚の抜け落ちた時である。いずれも右であった。
北支事変の風雲急なる折柄、殊にその記憶がまざまざと甦って来るのである。