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Japanische Klassiker mit Furigana

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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme

Aozora Bunko

十二月のある晩に遅く湯に行った。今では代が変っているが、湯屋はやはりおなじ湯屋であった。わたしは夜の湯は嫌いであるが、その日は某所の宴会へ行ったために帰宅が自然遅くなって、よんどころなく夜の十一時頃に湯に行くことになった。その晩も冬至の柚湯で仕舞湯に近い濁った湯風呂の隅には、さんざん煮くたれた柚の白い実が腐った綿のように穢らしく浮いていた。わたしは気味悪そうにからだを縮めてはいっていた。もやもやした白い湯気が瓦斯のひかりを陰らせて、夜ふけの風呂のなかは薄暗かった。

※(歌記号、1-3-28)常から主の仇な気を、知っていながら女房に、なって見たいの慾が出て、神や仏をたのまずに、義理もへちまの皮羽織……

少し錆のある声で清元を唄っている人があった。音曲に就いてはまんざらのつんぼうでもない私は、その節廻しの巧いのに驚かされた。じっと耳をかたむけながら其の声の主を湯気のなかに透かしてみると、それはかの徳さんであった。徳さんが唄うことは私も子供のときから知っていたが、こんなにいい喉をもっていようとは思いも付かなかった。琵琶歌や浪花節が無遠慮に方々の湯屋を掻きまわしている世のなかに、清元の神田祭――しかもそれを偏人のように思っていた徳さんの喉から聞こうとは、まったく思いがけないことであった。