Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
そんな場合でも露西亜兵携帯の黒パンはどうしても喉に通りませんでした。シナ人が常食の高粱も再三試食したことがありますが、これは食えない事もありませんでした。戦闘が始まると、シナ人はみな避難してしまうので、その高粱飯も戦闘中には求めることが出来ず、空腹をかかえて駈けまわることになるのです。
燈火は蝋燭か火縄で、物をかく時は蝋燭を用い、暗夜に外出する時には火縄を用いるのですが、この火縄を振るのが案外にむずかしく、緩く振れば消えてしまい、強く振れば振り消すと云うわけで、五段目の勘平のような器用なお芝居は出来ません。今日ならば懐中電燈もあるのですが、不便なことの多い時代、殊に戦地ですから已むを得ないのです。火縄を振るのは路を照らす為ばかりでなく、野犬を防ぐためです。満洲の野原には獰猛な野犬の群れが出没するので困りました。殊にその野犬は戦場の血を嘗めているので、ますます獰猛、ほとんど狼にひとしいので、我々を恐れさせました。そのほかには、蝎、南京虫、虱など、いずれも夜となく、昼となく、我々を悩ませました。蝎に螫されると命を失うと云うので、虱や南京虫に無神経の苦力らも、蝎と聞くと顔の色を変えました。