Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
満洲の秋は寒い。八月の末でも、夜は焚火がほしい位である。その寒い雨に夜も昼も濡れていた為に、一行のうちに風邪をひく者が多かった。私もその一人で、鞍山店附近にさしかかった時には九度二分の熱になってしまった。
他の人々も私の病気を心配して、このままで雨に晒されているのは良くあるまいというので、苦力の高を添えて私を途中にとどめ、他の人々は前進することになった。鞍山店は相当に繁昌している土地らしいが、ここらの村落の農家はみな何処へか避難して、どの家にも人の影はみえない。高は雨の中を奔走して、比較的に綺麗な一軒のあき家を見つけて来てくれた。そこへ私を連れ込んで、彼は直ぐに高粱を焚いて湯を沸かした。珈琲に砂糖を入れて飲ませてくれた。前方では大砲や小銃の音が絶え間なしにきこえる。雨はいよいよ降りしきる。こうして半日を寝て暮らすうちに、その日もいつか夜になった。高は蝋燭をとぼして、夕飯の支度にかかった。
日が暮れると共に、わたしは一種の不安を感じ始めた。以前の王福の正直は私もよく知っていたが、今度の高秀庭の性質はまだ本当にわからない。私の荷物は勿論、一行諸君の荷物もひと纏めにして、彼がみな預かっているのである。