Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme

Aozora Bunko

さらに奥深く進んで、衣冠を着けたる一個の偶像を見た。この瞬間に、わたしもまた一種の英雄崇拝者であると云うことをつくづく感じた。わたしは偶像の前に頭をたれた。男もまた粛然として頭をたれた。わたしはやがて頭をあげて見返ると、男はまだ身動きもせずに、うやうやしく礼拝していた。

私の眼からは涙がこぼれた。

この男は伊達家の臣下として、昔はいかなる身分の人であったか知らぬ。また知るべき必要もあるまい。彼はただ白髪の遺臣として長く先君の墓所を守っているのである。維新前の伊達家は数千人の家来をもっていた。その多数のうちには官吏や軍人になった者もあろう、あるいは商業を営んでいる者もあろう。あるいは農業に従事している者もあろう。栄枯浮沈、その人々の運命に因っていろいろに変化しているであろうが、とにもかくにも皆それぞれに何らかの希望をもって生きているに相違ない。この男には何の希望がある。無論、名誉はない。おそらく利益もあるまい。彼は洗い晒しの着物を着て、木綿の袴を穿いて、人間の一生を暗い冷たい墓所の番人にささげているのである。

土の下にいる政宗が、この男に声をかけてくれるであろうか。