Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
もとより代表的婦人を選んだという訳でもない、また格別に偉い人間を見いだしたというのでもない、むしろ平凡な人々の身の上を、平凡な筆に因って伝うるに過ぎないのかも知れない。
塩竈街道の燕沢、いわゆる「蒙古の碑」の付近に比丘尼坂というのがある。坂の中途に比丘尼塚の碑がある。無名の塚にも何らかの因縁を付けようとするのが世の習いで、この一片の碑にも何かの由来が無くてはならない。
伝えて云う。天慶の昔、平将門が亡びた時に、彼は十六歳の美しい娘を後に残して、田原藤太の矢先にかかった。娘は陸奥に落ちて来て、尼となった。ここに草の庵を結んで、謀叛人と呼ばれた父の菩提を弔いながら、往き来の旅人に甘酒を施していた。比丘尼塚の主はこの尼であると。
わたしは今ここで、将門に娘があったか無かったかを問いたくない。将門の遺族が相馬へはなぜ隠れないで、わざわざこんな処へ落ちて来たかを論じたくない。わたしは唯、平親王将門の忘れ形見という系図を持った若い美しい一人の尼僧が、陸奥の秋風に法衣の袖を吹かせながら、この坂の中程に立っていたと云うことを想像したい。
鎌倉の東慶寺には、豊臣秀頼の忘れ形見という天秀尼の墓がある。