Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
しかも其の美しい夢はたちまちに破られました。案内者は笠を持って起ち上がりました。
「さあ、旦那、ちっと急ぎましょう。霧がだんだんに深くなって来ます。」
旅人と遊女の舞台は霧に隠されてしまいました。わたしも草鞋の紐を結び直して起ちました。足もとには岩が多くなって来ました。頭の上には樹がいよいよ繁って来ました。わたしは山蛭を恐れながら進みました。谷に近い森の奥では懸巣が頻りに鳴いています。鸚鵡のように人の口真似をする鳥だとは聞いていましたが、見るのは初めてです。枝から枝へ飛び移るのを見ると、形は鳩のようで、腹のうす赤い、羽のうす黒い鳥でした。小鳥を捕って食う悪鳥だと云うことです。ジィジィという鳴く音を立てて、なんだか寂しい声です。
岩が尽きると、また冷たい土の路になりました。ひと足踏むごとに、土の底からにじみ出すようなうるおいが草鞋に深く浸み透って来ます。狭い路の両側には芒や野菊のたぐいが見果てもなく繁り合って、長く長く続いています。ここらの山吹は一重が多いと見えて、みんな黒い実を着けていました。
よくは判りませんが、一旦くだってから更に半里ぐらいも登ったでしょう。