Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
いわんや日帰りに於いてをやである。
それが今日では、一泊はおろか、日帰りでも悠々と箱根や熱海に遊んで来ることが出来るようになったのであるから、鉄道省その他の宣伝と相俟って、そこらへ浴客が続々吸収せらるるのも無理はない。それと同時に、浴客の心持も旅館の設備なども全く昔とは変ってしまった。
いつの世にも、温泉場に来るものは病人と限ったわけでは無い。健康な人間も遊山がてらに来浴するのではあるが、原則としては温泉は病いを養うところと認められ、大体において病人の浴客が多かった。それであるから、入浴に来る以上、一泊や二泊で帰る客は先ず少ない。短くても一週間、長ければ十五日、二十日、あるいはひと月以上も滞在するのは珍しくない。私たちの若い時には、江戸以来の習慣で、一週間をひと回りといい、二週間をふた回りといい、既に温泉場へゆく以上は少なくともひと回りは滞在して来なければ、何のために行ったのだか判らないということになる。ふた回りか三回り入浴して来なければ、温泉の効き目はないものと決められていた。
たとい健康の人間でも、往復の長い時間をかんがえると、一泊や二泊で引揚げて来ては、わざわざ行った甲斐が無いということにもなるから、少なくも四、五日や一週間は滞在するのが普通であった。