Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
堀端の柳は半蔵門から日比谷まで続いているが、此処の柳はその反対の側に立っているのである。どういう訳でこれだけの柳が路ばたに取り残されていたのか知らないが、往来のまん中よりもやや南寄りに青い蔭を作っていた。その当時の堀端はすこぶる狭く、路幅はほとんど今日の三分の一にも過ぎなかったであろう。その狭い往来に五、六株の大樹が繁っているのであるから、邪魔といえば邪魔であるが、電車も自動車もない時代にはさのみの邪魔とも思われないばかりか、長い堀端を徒歩する人々にとっては、その地帯が一種のオアシスとなっていたのである。
冬はともあれ、夏の日盛りになると、往来の人々はこの柳のかげに立ち寄って、大抵はひと休みをする。片肌ぬいで汗を拭いている男もある。蝙蝠傘を杖にして小さい扇を使っている女もある。それらの人々を当て込みに甘酒屋が荷をおろしている。小さい氷屋の車屋台が出ている。今日ではまったく見られない堀端の一風景であった。
それにつづく日比谷公園は長州屋敷の跡で、俗に長州ヶ原と呼ばれ、一面の広い草原となって取り残されていた。三宅坂の方面から参謀本部の下に沿って流れ落ちる大溝は、裁判所の横手から長州ヶ原の外部に続いていて、むかしは河獺が出るとか云われたそうであるが、その古い溝の石垣のあいだから鰻が釣れるので、うなぎ屋の印半纏