Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
わたしの車なども其の一例であった。
前は軍医、あとは私、二台の車が前後して走るうちに、三宅坂上の陸軍衛戍病院の前に来かかった時、前の車夫は突然に梶棒を右へ向けた。軍医は病院の門に入るのである。今日と違って、その当時の衛戍病院の入口は、往来よりも少しく高い所にあって、さしたる勾配でもないが一種の坂路をなしていた。
その坂路にかかって、車夫が梶棒を急転した為に、車はずるりと後戻りをして、そのあとに付いて来た私の車の右側に衝突すると、はずみは怖ろしいもので、双方の車はたちまち顛覆した。軍医殿も私も路上に投げ出された。
ぞっとしたのは、その一刹那である。単に投げ出されただけならば、まだしも災難が軽いのであるが、私の車のまたあとから外国人を乗せた二頭立ての馬車が走って来たのである。軍医殿は幸いに反対の方へ落ちたが、私は路上に落ちると共に、その馬車が乗りかかって来た。私ははっと思った。それを見た往来の人たちも思わずあっと叫んだ。私のからだは完全に馬車の下敷きになったのである。
馬車に乗っていたのは若い外国婦人で、これも帛を裂くような声をあげた。私を轢いたと思ったからである。