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Japanische Klassiker mit Furigana

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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme

Aozora Bunko

今日では郊外の新開地へ行っても、こんなに暗い寂しい新年の宵の風景は見いだされまい。東京の繁華の中心という銀座通りが此の始末であるから、他は察すべしである。

その頃、銀座通りの飲食店といえば、東側に松田という料理屋がある。それを筆頭として天ぷら屋の大新、同じく天虎、藪蕎麦、牛肉屋の古川、鳥屋の大黒屋ぐらいに過ぎず、西側では料理屋の千歳、そば屋の福寿庵、横町へはいって例の天金、西洋料理の清新軒。まずザッとこんなものであるから、今日のカフェーのように遊び半分にはいるという店は皆無で、まじめに飲むか食うかのほかはない。吉川のおますさんという娘が評判で、それが幾らか若い客を呼んだという位のことで、他に色っぽい噂はなかった。したがって、どこの飲食店も春は多少賑わうと云う以外に、春らしい気分も漂っていなかった。こう云うと、甚だ荒涼寂寥たるものであるが、飲食店の姐さん達も春は小綺麗な着物に新しい襷でも掛けている。それを眺めて、その当時の人々は春だと思っていたのである。

その正月も過ぎ、二月も過ぎ、三月も過ぎ、大通りの柳は日ましに青くなって、世間は四月の春になっても、銀座の町の灯は依然として生暖かい靄の底に沈んでいるばかりで、夜はそぞろ歩きの人もない。