Japanische Klassiker mit Furigana
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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Lesen Sie 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 183.656 Zeichen · 363 Bildschirme
とりわけて、夏の暑い時節にはその感が多いようである。
今日の衛生論から云うと余り感心しないものであろうが、かの冷奴なるものは夏の食い物の大関である。奴豆腐を冷たい水にひたして、どんぶりに盛る。氷のぶっ掻きでも入れれば猶さら贅沢である。別に一種の薬味として青紫蘇か茗荷の子を細かに刻んだのを用意して置いて、鰹節をたくさんにかき込んで生醤油にそれを混ぜて、冷え切った豆腐に付けて食う。しょせんは湯豆腐を冷たくしたものに過ぎないが、冬の湯豆腐よりも夏の冷奴の方が感じがいい。湯豆腐から受取る温か味よりも、冷奴から受取る涼し味の方が遥かに多い。樋口一葉女史の「にごり江」のうちにも、源七の家の夏のゆう飯に、冷奴に紫蘇の香たかく盛り出すという件りが書いてあって、その場の情景が浮き出していたように記憶している。
「夕顔や一丁残る夏豆腐」許六の句である。
ある人は洒落て「水貝」などと呼んでいるが、もとより上等の食いものではない。しかもほんとうの水貝に比較すれば、その価が廉くて、夏向きで、いかにも民衆的であるところが此の「水貝」の生命で、いつの時代に誰が考え出したのか知らないが、江戸以来何百年のあいだ、ほとんど無数の民衆が夏の一日の汗を行水に洗い流した後、ゆう飯の膳の上にならべられた冷奴の白い肌に一味の清涼を感じたであろうことを