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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

その数日のち、もっこ部屋の人足たちのうち十七人が、島の外へ仕事に出されるようになった。外稼ぎに出される者は、平生の行状がよく、逃亡のおそれがないと認められた者に限っていた。栄二はその選に入らず、残って他の仕事をしたが、そのため、寄場の中のいろいろな手職や作業を見たり、経験したりした。牡蠣灰を焼くのも楽ではないが、もっとも激しい作業は油絞りで、これにはよほど躰力のすぐれた者でも、長くは続かないということであった。ほかには彫物、竹笠作り、駕籠作り、紙漉き、元結、草履、繩細工、米搗き、大工、左官、百姓、炭団、などという職種があり、もっこ部屋の残された人足たちは、これらの仕事の助け役をするわけで、材料を船からおろしたり、成品を積み込んだり、手のたりないところを手伝ったりするのであった。――栄二は命ぜられたことはしたが、自分からはなにをしようともしなかった。安物の唐紙を作る部屋に五人いて、これはいつも注文に追われているようすだったが、栄二はその仕事だけは手を出さなかった。小頭に命じられ、人見張役にも命じられたが、首を振るだけで決して近よらなかった。その仕事は彼に絶望的な怒りを感じさせるからであった。