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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

十三の一

栄二の言葉は不自然にとぎれ、彼はさぶから顔をそむけたまま、やや暫く呼吸をととのえていた。

「考えてみるよ」と、やがて栄二は低い声で続けた、「長いことは云わない、あと半月か三十日待ってくれ、来月のいまごろまでにはなんとかする、きっとなんとかできると思う、それまでの辛抱だと思って待っていてくれ」

さぶは黙って、気ぬけのしたような身ぶりで、下に置いた包みを取りあげた。

十三の一

風化した崖が自然と崩れるように、あるいはまた、崖の端にできた地割れが急にひろがり始めたように、もっこ部屋の空気は眼にみえてとげとげしく、険悪になっていった。義一のまわりに集まる者たちは、三月にはいると三十人ちかい数になり、ときによって増減はあっても、十五人以下ということはなかった。勝負はつねに殺気をおびて、腹巻に下帯だけという、きおい立った男が二人や三人はいた。小頭の伝七老人は、或るとき「まるで鉄火場だな」と呟いた。栄二にはその内容はわからないが、言葉の意味はおよそ見当がついた。そしていまでは、小島良二郎のほかに役人が二人、この部屋の見張りに当っていた。

或る夜、栄二が海端で棒投げをしていると、万吉があとを跟けて来て呼びかけた。