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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

六の三

それにおれはきさまが気にいってる、きさまにはひいきのうしろ盾があるそうだが、そんなものにびくびくするおれじゃあねえ、おれは自分が気にいってるから、おめえが勝手なまねをしても見してるんだ、今夜のことだってもしおれがそうしようと思えば、きさまに仕置をすることだってできるんだぞ、なあぶしゅうと云って、松田はそこへ跼んだ。

「あのくそ野郎のことを聞かしてくれ、あの野郎はしゃばになにか余罪がありそうだ」と松田は云った、「おめえが知ってることを話してくれれば、あの野郎の正躰を洗い出してやる、どうだぶしゅう、話を聞かせねえか」

栄二はなおも黙っていて、やがて立ちあがり、そのまま長屋のほうへあるきだした。松田もすぐに立って追いつき、うしろから栄二の肩を掴んだ。

六の三

「待て、この野郎」松田はそうどなると、肩を掴んだ手で栄二の躯を自分のほうへ向かせ、平手で頬を殴った、「きさまおれをなめてるな」

栄二は躯の力をぬき、両手を垂れたまま松田の顔をみつめた。松田はもういちど殴ろうとして手をあげたが、栄二のようすをなんと思ったか、あげた手をゆっくりおろし、掴んでいた肩を押しやった。