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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

十五の一

着物をぬぎ、寝衣をひっかけたところで、なめらかにひき緊った小さな肩と、くびれた裸の脇腹とが、おどろくほど新鮮に嬌めかしく感じられた。

「おらあだめなやつだ」さぶはそう云って横に転がった、「おらあ一生、半端もんだ」

十五の一

栄二はさぶの仕事の手伝いから始めた。よくって中どころの襖、たいていは長屋用のからかみであり、ときに表通りの商家や、囲い者の家の障子の張替えなどもやった。あしかけ三年あそばせていた腕のなまりを、そういう駄仕事から始めて、取返そうと思ったのだ。

「こんな仕事はいいよ」とさぶはきまり文句のように云った、「栄ちゃんなんかには勿体ない、おれ一人で片つけるよ」

「いいったら」栄二はいつもうるさそうに答えた、「心配するなよ」

さぶは金杉の家へ移り、朝八時に来て、夜なべがなければ、晩めしを喰べて帰った。夜なべをするほど仕事は多くなかったし、御徒町の経師屋にもあまり仕事はなかった。初めに俗っぽい大幅の表具を頼まれたとき、まだ腕がなまっていて表具はできない、と断わったのがわるかったらしい。芳古堂の名を鼻にかけていると思われたようで、それまでさぶにまわしていた仕事まで減らされてしまった。