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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

四の二

そうじゃあねえか、それで出入りを止めるために、あんな拵えごとをしたんじゃあねえのか。彼はそう思い、それがもっとも事実に近いと考えた。

「慥かめるんだ」彼はぎゅっと拳を握った、「そのほかに道はねえ、ぬすっとにされたまんまで生きちゃあいかれねえ、生きていかれるもんか、おらあきっと慥かめてみせるぞ」

四の二

「旦那に会わしてくれ」と栄二は綿文の店先へ腰を掛けて云った、「芳古堂の栄二ってもんだ、うかがいてえことがあって来たって、取次いでくれ」

まだ朝のことで、店をあけたばかりだし、客は一人もなく、小僧が三人で掃除をしていた。栄二は五日も飲み続け、いまも相当に酔っていたから、帳場格子の中にいるのを小僧ではなく、手代か番頭だと信じているようであった。

「栄さんはわかってますよ」と小僧の一人が云った、「なんべん云ったらいいのかな、旦那はまだ寝てらっしゃるんですったら」

「なんだ小僧、てめえなんぞの出る幕じゃあねえぞ」栄二はおくびをし、そのおくびの酒臭いのに自分で顔をしかめた、「――てめえなんぞはな、銭の入った麻袋を、ばかみてえに一日じゅう板へ叩きつけてりゃあいいんだ、おらあ旦那に会うんだから、綿文の主人に会うんだ、徳兵衛に出て来いと云ってくれ」