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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

十二の四

それでもとんでいった丸薪は、その杭に当って高い音をたてた。

「うめえもんだな」と清七が云った、「あの棒杭を覘ってやるのかい」

十二の四

そうだと答えながら、栄二は撞木杖を突き突きあるいていって、杭のまわりに落ちている丸薪を拾いあげた。四本はすぐにみつかったが、一本は遠くへはねとんだらしく、どうしてもみつけることができなかった。

「まだその杖がいるのかね」

「おかげでどんなに助かってるかわからない、こいつはなにより有難かったよ」そう云って栄二は杖を撫でた、「――おめえ、なにか用があるんじゃねえのか」

「うん、その――」清七はもじもじした、「ちょっと相談があるんだが、ぶしゅう、じゃあねえ栄さん立話は疲れるだろう」

「なに、もう慣れてるさ」

「じつはな」と云って清七はそら咳をし、耳たぶをいじった、「じつはその、今日、おとよのやつが来たんだ」

栄二はほの白い夜気をすかして、清七の顔を見まもった。

「知ってるな、おとよのこと」

「手鎖はこたえたからな」と栄二が云った、「それで、どうした」

「あいつ、松造と別れたって云うんだ、そしてから、おれといっしょになりてえって」

自分さえ望めば、この寄場から出ることができる。