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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

十一の五

「まっぴら牛蒡がどうしたって」

「洒落の絵解きをさせるな」と参平は拳で鼻をこすった、「それよりおめえはどうする、役所までまかり出て手習いをするか」

「おめえが牛蒡のてんぷらだってえのに、おれだけがどうしてまかり出るんだ」

「てんぷらだってやがる」参平は鼻柱へ皺をよせた、「きんぴらの語呂合せがわからねえのかな」

「ざまあみやがれ」と吉造が手を叩いた、「とうとうてめえで洒落の絵解きをしやあがった」

「まあちょっとお待ちなさい」と与平がなだめるように口をきった、「みんなの気持はよくわかります、たしかに役所まででかけるほどのことじゃあない、いわば気ままにできるから字の一つも覚えようというので、改まって寺子屋へかようようなことはおっくうには違いないでしょう、それはそうだろうが、岡安さんがせっかく心配して下さるんだし、お奉行さまのお声がかりなのだから、ひと月でも半月でも、かようだけはかよってみるほうがいいと思いますがね」

「与平さんはそれでもよかろうがね」と小頭の倉太が云った、「わざわざ役所までいって、誰かの云うとおり、ひちむずかしい講釈付きで手習いをしろというのはむりな相談だよ」