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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

十三の五

十三の五

栄二は吃驚したように岡安を見あげた。おまえは咎人だ、などという言葉を、まさか岡安の口から聞こうとは思わなかったからだ。――岡安喜兵衛の表情はすっかり変ってみえた。眼だけはあたたかみを湛えていたが、顔つきぜんたいは冷やかにきびしく、人足たちが「役人づら」と蔭でいう、そのままの顔つきにみえた。栄二はこれまでに一度も、そういう顔つきの岡安を見たことがなかった。

「部屋にある持物はこっちへ運ばせる」と岡安は云った、「――ここにいるのもあと二、三日だろうと思う、それまでゆっくり休んでおくがいい」

栄二はまた両手を突き、頭をさげた。

それから中一日おいた二日めの夜、晩めしが済んで一刻ほどしてから、前触れもなく与平があらわれ、まもなく二人の下役人の手で、ささやかながら酒肴の膳が運ばれて来た。これはわれわれの寸志だから内密に、というようなことを、下役人は呟くように告げて去った。

「いい晩だね」与平がてれたように、低い声で口をきり、さぐるように栄二を見た、「――みんな心配しているんだが、大丈夫なんだろうね」

「町奉行で再吟味ということになった」と云って栄二は徳利を持った、「でもたいしたことはないようだから、みんなに心配しないようにって云ってくれよ、一つあげよう」