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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

七の五

七の五

事情はまもなくわかった。

「あにいの云うとおりだ」と万吉は頭を掻きながら云った、「おらあまんまと二朱がとこにせがねを掴まされたよ」

万吉は念を入れて聞きまわったようだ。実際にはごく単純な話で、おとよが多情な女であり、云いよる男なら誰にでも身を任せる。こぶの清さんとは松造よりまえからの仲で、おとよとこぶが逢っているのを、松造が覗きにいっていたのだという。それから松造がちょっかいを出し、おとよも松造に熱くなった。こぶはすぐ暴力をふるう無法者だが、おとよのことになると骨を抜かれたようで、ただもう金や物を与えてはくどくばかり、ほかの男たちについて怒ることも、嫉妬する気力さえもないということであった。

「おとよってえあまはとんでもねえ男たらしだって思った」と万吉は云った、「ところがふしぎなことにそうでもねえんだな、誰に対しても情が厚くって、不実なことは決してしていねえんだ、こぶは油絞りで、この寄場ではいちばん稼ぎが多い、だから金や物をせっせとくれてやるらしいが、それだからどうってこたあねえ、びた銭一枚やらねえ者と、ちっとも扱いが変らねえっていうこった」