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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
二の五
「続けろよ」と栄二が云った、「断わっとくがな、へんなまねをすると一人は叩っ殺すぞ、こっちは堅気な職人だ、やくざに売られた喧嘩で一人や二人叩っ殺したって罪にゃあならねえ、さあ、三人ともそっちへいって並べ」
跼みこんでいたのと、組み伏せられた男とが立ちあがり、しぶしぶおのぶの兄と名のった男の脇へ寄っていった。
二の五
店へ帰って寝てからも、さぶはまだ胸がどきどきすると云っていた。そこは仕事場の隣りにある十帖で、栄二とさぶ以下、十七になる伝六、三月にはいった卯吉、定と、小僧たちを合わせた、五人の寝場所になっていた。多市、重七、五郎の三人には、それぞれ自分ひとりの四帖半を与えられているが、こっちの五人はなにもかもこみで、衣類や日用品、蒲団や持物なども、三間の戸納に仕切りがあって、その中へ入れるようになっていた。戸納の反対側は壁、一方は仕事場へ通じる板戸、東側が窓という造りで、栄二とさぶとはその窓際に寝床を並べていた。
三人の小僧たちはもう眠ってい、伝六のやまいだといわれるいびきが、十帖いっぱいにそうぞうしい音をふりまいていた。
「あの三人はなに者だろうな」とさぶが云った、「おのぶの兄だって云ったあの男は、本当におのぶの兄さんなんだろうか」