轻松读懂日语经典作品
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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
一度こっちになにか起これば、そんなおためごかしは煙のように消えてしまい、昨日までのえびす顔がいきなり鬼の面に変っちまうんだ。道具袋の中に金襴の切がはいっていたというだけで、十年続いた心と心のつながりが、凧の糸の切れるようにぷつんと切れてしまうんだ。それに比べると、才次がおれをめのかたきにする気持にはごまかしも嘘もない、おれをやっつけてやろうと、隙を覘っている気持はしんけんだ。人間がしんけんに思い詰めるということは、よかれあしかれ本物だし立派だ。こんどこそ対等に、本気であいつとぶっつかることができたんだ。
――それなのにいま、隠していた余罪がばれたという。
本当にそんなことがあったのだろうか、おれがひっかかったように、あいつもまた世間のやつらの罠におとされたんじゃないのか。そうだとすると、あんなひどいことをするんじゃあなかった、と栄二は思った。
それからのち彼はようやく、周囲の人間や出来事を、注意して見るようになった。才次のことがきっかけになり、この寄場にいる人間がみな、世間からのけ者にされた、という事実に気づいたのだ。ここにいるのは自分のなかまなのだ、世間のやつらは敵だが、この寄場にいる者は自分と同じように、世間から痛めつけられ、騙されたりぺてんにかけられたりしたのだ。